【憲法②】三権分立と国会(立法権)の仕組みについてわかりやすく解説

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目次

憲法は統治から勉強する理由

憲法の人権分野は抽象的な内容が多く、法律初学者にはわかりにくい内容が非常に多いです。ですが、統治の分野に関して抽象的な内容はほとんどなく、基本的に条文の文言そのままの内容となります。

Y教授

ということで、まずは統治を覚えましょう

クリスちゃん

ところで、統治ってなに?

Y教授

三権分立は知ってますよね
中学校で習ったと思います

クリスちゃん

えーっと・・・
立法権、行政権、司法権だっけ?
でも、内容までは覚えてないよー

Y教授

大丈夫です
今回は三権分立の内容から学んでいきたいと思います

クリスちゃん

あいあいさー

三権分立と国会の関係

三権分立とは、国の権力を立法権(国会)、行政権(内閣)、司法権(裁判所)の三つに分ける仕組みのことをいいます。これは、三つの権力を対等にして、権力相互の均衡を保つことが目的です。国会の仕事は法律を作ることです。内閣の仕事は国会が作った仕事を実行することです。裁判所の仕事は国会が作成した法律が権力の濫用にあたらないか監視することです。

基本的に、国会議員は国民の投票(選挙)によって選ばれます。国会の仕事は法律を作ることのため、国民が選んだ人が法律を作る、つまり、国民の一人ひとりが法律を作っているといってもいいでしょう。

ここで、一つの疑問が沸いた人は、憲法の条文をよく読んでいるといえます。

第四十一条
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

三権分立により、国会と内閣と裁判所の権力は対等と言っているのに、憲法の条文には国会が国権の最高機関と書かれているのです。

クリスちゃん

うおおおー
いきなり条文と違うこと言い始めたー
統治は条文どおりなんて嘘だー

Y教授

これは、政治的美称説といって、国会が主権者である国民によって直接選任されているため、格式高いことを表していると言われています
ようは、国会は国民が選んだ人が議員になる機関ですが、内閣と裁判所の人事は国民が選ぶわけではありません
このことから、国政の中心的な地位を持っているという政治的美称だということで、法的な意味は持ちません

クリスちゃん

うーん
わかったような、わからないような

Y教授

それに、憲法43条に、このように書かれています

第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
② 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

Y教授

つまり、国会議員は全国民が選んだ議員であり、国民が選んだ人が法律を作るのだから、国会議員は国民の意思を反映しているといえるのです
そして、国民が日本で最も偉いのだから、国民が選んだ国会は、国の最高機関ということなのです

クリスちゃん

ようは、お世辞ってことね
国会は国と関係性が強いから、国会が最高だって言ってるってことでファイナルアンサー?

Y教授

ふぁ、ふぁいなるあんさー・・・

Y教授

表現はよくないけど、理解できているようで良かったよ

国会と行政の関係

基本的に、国会が作る法律は抽象的な条文で作られます。なぜかというと、特定の個人や団体に適用される法律を作ることはできないため、あえて抽象的にしているのです。たとえば、一昔前に国家転覆を企てた宗教団体がありましたが、法律はそのような宗教団体を名指しで解散させるような条文を作成することはできません。宗教法人を対象とした法律ならば、すべての宗教法人を対象とするような内容にして、どの宗教法人に適用されるかを決めるのは行政の仕事になります。

クリスちゃん

つまり、宗教法人を対象にした法律を作るのが国会の仕事で、悪いことをした宗教団体の解散を決定するのが行政の仕事ってこと?

Y教授

その通り!
君、意外と物分かりがいいね!

クリスちゃん

い、意外って・・・

きっと、わたしアホだと思われてるんだろうな
まあいいけど

国会中心立法の原則と国会単独立法の原則

国会中心立法の原則とは、国の行う立法は国会によってされなくてはならないという原則であり、国会単独立法とは、国会による立法は国会以外の機関の参与を必要としないという原則です。

ようは、法律を作る際に、法律のプロの集団である裁判所が意見をすることは許されないことや、法律を作る際には天皇や他国の首相の助言を必要としないということです。

しかし、この原則にも例外があります。

第58条2項 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

第77条1項 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

国会による立法は国会以外の機関の参与を必要としないとされていますが、憲法95条では、住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会はこれを制定できないとされています。

クリスちゃん

うおおおー
また矛盾したことを言い始めた―

Y教授

例外といいますが、結局のところ、憲法の条文に書かれているから、その条文が正しいということですね

Y教授

というか、彼女は「矛盾」という言葉を知っているのですね
関心しましたよ!

衆議院と参議院

国会は衆議院と参議院で構成されています。衆議院と参議院について、以下の表をご覧ください。

スクロールできます
衆議院参議院
任期4年6年
解散ありなし
議員資格満25歳以上満30歳以上
選挙区小選挙区と比例代表区大選挙区と比例代表区

衆議院と参議院は同時になることはできません。

国会の仕事は法律を作ることですが、その内容については憲法59条に書かれています。

第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
② 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
③ 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
④ 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

つまり、衆議院で可決した後に、参議院で否決されるか、参議院で60日以内に議決しないときに、両議院の協議会で会議をすることになります。なお、この両院協議会は任意的であり、この「任意」というのは法律資格で問題に出されるので要注意です。そして、衆議院の再議決により、三分の二以上の多数で可決したときに、法律になります。

ここで疑問となるのが、なぜ衆議院の決定なのかということですが、国会は衆議院優位となるからです。なぜかというと、参議院の任期が6年に対して、衆議院は4年です。ということは、衆議院の方が選挙の間隔が短く、より国民に近い存在であるからなのです。

Y教授

上記の赤い文字は法律試験などによく出題されるところなので覚えておきましょう

クリスちゃん

数字は苦手なんだよなー

第五十六条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
② 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

Y教授

憲法56条1項の総議員の三分の一以上や、2項の出席議員の過半数も覚えておくといいでしょう。

クリスちゃん

お、おう・・・
わたし頑張る!

第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
③ 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

国会の常会は毎年1月に召集されます。会期は150日間で、常会は政府から翌年度の総予算や法律案が提出されます。そして、必要に応じて臨時会が召集され、臨時会の会期は衆参両院の議決で決定されます。衆議院が解散された場合には、解散から40日以内に選挙を行い、選挙の日から30日以内に国会を召集しなければなりません。また、憲法54条2項において、内閣は国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができると書かれていますが、これは任意なので間違えないようにしましょう。

Y教授

この辺の条文の数字や文言も覚えましょう

クリスちゃん

む、無理すぎる・・・

Y教授

すぐに覚える必要はないですが、国会について理解が深まった段階で細かい部分を覚えることが大切です
というか、簡単に覚えられないから、法律資格は難易度が高いのです

クリスちゃん

ですよねー

今は無理だけど、少しずつ覚えていこう

国会議員の権利

国会議員の権利として、歳費受領権、不逮捕特権、免責特権があります。これは憲法49条~51条に書かれています。

第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

歳費受領権とは、憲法49条に定められた、いわゆる国会議員の給料に関する条文です。なお、国会議員は在任中に給料を減額されることもありますが、裁判官は在任中に給料を減額されることはありません。

不逮捕特権とは、憲法50条に定められた、会期中に逮捕されず、会期前に逮捕された場合には、その議院の要求があれば釈放しなければならないという、なんともすごい特権です。これは、行政権による権利の濫用を防ぐためにあると言われています。たとえば、総理大臣が暴走して国会議員を全員逮捕しようとしても、会期中には逮捕することはできません。ただし、院外での現行犯逮捕(万引きや痴漢など)や、院の許諾がある場合には逮捕することができます。

免責特権とは、憲法51条に定められた、責任免除の権利です。ようは、国会議員が自由な発言ができるようにしているという権利です。なお、これは民事責任や刑事責任は負いませんが、政治的責任は負うことになります。政治的責任とは、発言により国民の信頼を失うことや、院内での信用を失墜することです。

Y教授

つまり、国会議員の権利を守るための条文ですね

クリスちゃん

そろそろ頭がパンクしそう・・・

Y教授

もう少しで終わるので、最後まで頑張りましょう!

国会議院の資格及び除名と裁判官の罷免

第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

憲法55条では、国会議員の資格について規定しています。国民に選ばれた国会議員が被選挙権を有していない場合や、兼業禁止に該当していた場合、議員の議席を失うことになります。これには出席議員の三分の二以上の議決が必要になります。なお、悪いことをした議員をクビにする方法は、憲法58条に書かれています。

第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
② 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

議員をクビにする場合にも、三分の二以上の議決が必要です。

そして、裁判官の罷免です。

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
②弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

罷免とは、職務をやめさせることで、わかりやすく言えばクビということです。たとえ法律のプロである裁判官であっても、犯罪行為を行った場合にはクビにすることができます。裁判官をクビにする弾劾裁判所は憲法で規定されています。なお、不適切な発言などで罷免される例もあります。

クリスちゃん

どうして法律を知り尽くしている裁判官が法律違反をするの?

Y教授

まあ、裁判官も人間なので、欲望には勝てないのでしょう
ちなみに、裁判官が不適切な投稿をSNS上で繰り広げていたことにより罷免された実例もあります

国政調査権

第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

国会議員が法律を作るためには様々な調査が必要です。国政調査権とは、国の政治について調査し、これに関して証人の出頭、証言、記録の提出を求めることができる議員の権能となります。

クリスちゃん

もうだめ・・・
これで終わりかなあ・・・?

Y教授

よく頑張りましたね!
今回はこれで終わりです
効果的な復習として、行政書士試験や司法試験の問題を解いてみると、理解が深まりますよ!

クリスちゃん

うっ・・・
頭がパンクして吐きそう・・・

Y教授

無理はしなくてもいいので、ある程度理解したら、次は内閣(行政権)について学んでいきましょう

Y教授

というか、彼女はこれから先、私の講義についてこれるのか?
いや、ついてこれるように、わかりやすい講義をすることが私の使命なのだ!

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